MESSAGE
メッセージ
DXの最終的なゴールは
やるべきことの時間を増やすこと
ムラタの長期構想「Vision2030」の実現に向けて、DXの目指す方向性とは。
情報システム担当役員 須知 史行の想いをご紹介します。
須知 史行
村田製作所 執行役員 情報システム統括部 統括部長
1994年に入社し、経理・経営企画のコーポレート業務を担当。2008年に積層コンデンサ事業部に異動し、約9年間事業企画や商品企画に従事する。2017年~2019年にシンガポール拠点で製造部門責任者を経験し、その後、経営戦略部部長として長期構想策定等を担当する。2022年に情報システム統括部副統括部長を経て、2023年7月より現職。
DXを加速させ、「Vision2030」を実現
「Vision2030」の策定に、私は経営戦略部部長として参画し、「DXの推進」を経営変革の柱のひとつに掲げました。当社が「Vision2030」の実現に向かい、企業価値を高めていくためには、デジタル・AI技術を最大限に活用し、それを競争優位に転換する活動を加速することが非常に重要です。私自身、2022年より情報システム統括に所属し、全社的な取り組みとしてMDX(Murata DigitalTransformation)を進めています。我々は、MDXを「ムラタ内外の人・組織(業務)を、デジタルで縦横無尽につなぎ、プロセスを短く、早く、かつ見える化を進めることで、飛躍的に顧客価値と競争力の向上をドライブし続けるもの」と定義しており、大切な価値観である「CS」と「ES」を最大化することが目的です。
3層ポートフォリオ経営の実践とMDXは密接に結びついています。
3層目はビジネスモデルそのものの変革であり、1層目・2層目のコアビジネス強化には、バリューチェーン全体の最適化や、コンピタンスとしてのモノづくり・技術・事業開発・マーケティング力は、デジタル技術・当社独自のデータを活用してさらなる競争優位性を獲得していく必要があります。これらの活動推進には、ビジネス部門とIT部門が協働し、ともにドライブする状態をつくり出すことが重要です。当社は優位性のある技術とモノづくり力、お客様とのすり合わせの力で、顧客ニーズを製品という形で提供することを強みとしてきました。
今後は、製品による顧客価値向上に加え、データ活用によるシミュレーションの高度化、ひいてはデジタルツインの実現により、お客様や市場を起点とするデマンドチェーン、商品開発や製造プロセスに根ざしたエンジニアリングチェーン、原材料・部品の調達から販売に至るサプライチェーン、これらのプロセスを可視化・最適化してハイサイクル化し、そこで生まれた時間とデータを「CS」と「ES」の向上につなげたいと考えています。例えば、お客様の高度なシミュレーションに求められる製品仕様や実装環境での動作などさまざまなデータをWebプラットフォーム上で整理・提供したり、設計・調達支援を担う企業を通じてデジタルサービスを強化したりすることが、新たな競争軸になりうると思います。
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MDXの全体図
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3層ポートフォリオ
1層目
2層目
3層目
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「人」と「データ」がつなぐ
ハイサイクル組織へ
人とデータをつなぐ
「自律分散型の組織運営の実践」
我々の目指すハイサイクル組織※の実現の鍵は、現場担当者の意思決定と行動変容にあります。「自律分散型の組織運営の実践」に向け、従業員が自律的に情報・データを活用して全体性を意識した行動ができるような環境構築を目指しています。例えば、データ整備による利活用推進とセキュリティの担保、業務プロセスの最適化を実現する土台として、次世代デジタル基盤の検討を進めています。共通データを複数の人間が同時に閲覧できるデータ基盤を構築し、経営と現場、お客様や仕入先様の情報がつながることで、方針展開ができる状態になります。また、従業員のデジタル活用を身近なものにするため、当社専用環境下での生成AIサービスなどのデジタル・データ活用ツールの拡充やオンライン教育プラットフォームの活用、OJT型の教育・育成の強化、DXの社内取り組み・事例紹介を行う全従業員向けイベント「DX Innovators Day」の開催など、原体験を積み重ねていく場を多く提供しています。従業員が自分ごと化できてはじめてビジネスとITがドライブし、価値創造につながっていくものと考え、今後もこのような取り組みを加速させていきます。
※ 仮説を立て、実行し、検証し、次の仮説を立てるサイクルを早めることでスパイラルアップし、アジャイルな意思決定を可能とする組織